—しらかわ地域に移住したきっかけは何ですか?
25年前、主人との婚約をきっかけに東京から白河市に引っ越してきました。教員免許を持っていたので、最初の1年は小学校の臨時職員として働きながら結婚の色々な準備をしてたんですよね。
—当時、どんな感想をお持ちになりましたか?
東京からきたので、何にもないって感じたのは確かです。でも、性格もあるんだろうけど、人に本当に恵まれて。ホームシックとかは全くなかったです。
小学校を退職してからも、白河の素敵な方が多くて、私を地域に出そうって考える方が周りにたくさんいてくださったんですよ。ご近所の方々にもとにかく恵まれました。前年に小学校で担任した児童の親御さんからは水泳を教てほしいと頼み込まれて、泉崎村の村民プールに通ったり。子どもができるまではバレーボールとかテニスとか、色々連れ出してくださる方々の存在が大きかったですね。
—市民活動を始めたきっかけは何ですか?
きっかけは、公園デビューをして「子ども劇場」の活動に参加したことかな。子どもが生まれて1年くらいは家にいたんですが、公園デビューをして出会ったママの中に、「子ども劇場」の活動に参加している人がいたんです。それで、「ぜひ一緒にやらない?」って言われて。みんなが公園デビューしなきゃならないっていう時代でもなかったから、当時の公園は、教育とか市民活動に熱心な人たちが集まっていたような気がします。
—「子ども劇場」とは何ですか?
「特定非営利活動法人子どもNPO・子ども劇場全国センター」というのが母体で、1966年福岡から始まった子育ての市民活動(運動体)なのですが、全国に拠点があります。「生の舞台を子どもたちに見せましょう」ということと同時に、積極的なサークル活動・親子活動を通して、地域に根付いた活動や親子のコミュニケーションを目的にした組織です。
私が所属したのは「白河子ども劇場」です。娘が1歳8ヶ月くらいの時に初めて生の舞台を見に行ったことをきっかけに参加するようになりました。当時から、「子どもの権利条約」「CAP」「ワーク」になど、先進的な取り組みをしていました。
—「白河子ども劇場」では当時はどんな活動を?
自主活動、観劇活動、サークル活動など、いくつかの活動に分けることができます。
自主活動は、会員自らが企画運営し行っていました。サツマイモ植え、稲刈り、キャンプ、パン作り、肝試し、など。とても楽しかったです。
観劇活動は、プロの活動家を呼んで、舞台・コンサート・人形劇などを観劇できるものです。会場準備や撤収なども含め全て親子で担当し関わりました。私の子どもは撤収のお手伝いが大好きでした。
サークル活動は地域の異学年の家族と毎月交流ができる活動です。
「白河子ども劇場」をとおして、異なる年代・異なる学区のグループに入れたことは、今のわたしの活動の原点かもしれません。全国組織なので、白河市内に留まらず、福島県内で、交流、情報交換、共有などができました。
—そんななかで、「おひさまひろば」を始たきっかけは?
私はもともと東京で高校の教員をしていましたが、それは、自分が小学校から高校生になるまで様々な先生に出会えて、影響を受けたからでした。
白河子ども劇場に参加するようになり、人とのつながりが白河市の内外に広がり、親御さん同士とも親密になりました。そうして私自身も、自分の学んで来たことや経験して来たことを、ほかの方が必要とするなら少しでもお伝えしたいと感じるようになり、活動を始めました。
一方、2000年代の始め頃、3歳までの子どもを持つ親のうち、家の中で子育てを完結している世帯は日本全体で約8割にものぼっていました。当時はまだ、家庭だけで子育てを担うことの問題点は共有されていなかったのです。私は、3歳までの子どもを育てる家庭に差し伸べられる支援や制度が手薄なのでは、と感じていました。そんなときに、厚生労働省が「ひろば事業」を始めることを知り、しらかわ市民活動支援会の仲間と一緒に「おひさまひろば」をスタートすることになりました。
人口が多すぎず少なすぎない、8万人程度の白河市だからこそのスピードもあったような気がします。
—「おひさまひろば」の具体的な活動を教えてください
「おひさまひろば」は週6日あけています。理由は、どんな環境のママも思い立ったときに来られるようにするためです。例えば乳児を育ててるママはいつ出かけられるか先が読めないでしょう。だから、今日なら行けるという日に、いつでも来ることができる場所でありたいですよね。
おひさまひろばは親子で過ごすこともできるし、一時預かりもできます。白河市大信地区での出張おひさまひろばも定期的に開催しているので、遠くて来るのが大変なママにもぜひ足を運んでもらえれば嬉しいです。
震災後、2013年からはふるさと体験事業として、県内のいちご園を回ったり、親子で楽しめるコンサートへ行ったりできる、遠足のような事業も加えました。ひろばのなかだけで過ごすのではなくて、外に出る機会を作りたいと思ったからです。現在、しらかわ市民活動支援会の中でも、「おひさまひろば」は特に有償ボランティアの枠があるくらい、主要な活動の一つなんです。スタッフの人数が不足することなどはありませんので、心配せずに来てもらえればと思います。
ほかに、しらかわ市民活動支援会では家庭訪問型の「ホームスタートしらかわ」というものもありますよ。
—「おひさまひろば」の活動理念は?
私たちスタッフは、困ったことを相談されても、別のママと関わりやすくなるようにつなぐ役割はするけど、直接は解決策を提示しません。なぜなら、「おひさまひろば」はあくまでもママ同士のつな繋がりを作るための場所だから。
ママの「困った」をママ同士で共有したあと、知識を得る繋がりやリフレッシュする繋がりに変わっていくのかもしれないし、そうなって欲しい。そして、「おひさまひろば」を通して出会ったママとどう付き合っていくのかもママ自身が決めることなのね。勇気を出して連絡してみるのか、今回はやめておくのか、それはママさんが決めることだから。
—どんなママに来て欲しいですか?
こう言うと響きは悪いかもしれないけど、「来るもの拒まず、去る者追わず」かな。
妊婦さんをはじめ、とにかく来る人のハードルを下げて、どんな人でも受け入れてます。逆に、来なくなった人がいても特には何もしない。「おひさまひろば」は幼稚園でも保育園でもないから、スタッフは内心心配していたとしても待つしかないわけですよ。だからこそ、コミュニケーションや目配りはしっかりして、次に繋げないとと感じています。
—「おひさまひろば」に携わる中で意識していることはありますか?
私は幼児教育の専門家ではないので、学習する機会(研修等)があれば全て参加するようにしています。「おもちゃコンサルタント」の資格もそういう意識でとりました。おもちゃってこどもにとっては遊びに限らない活動そのもの、大きな影響力を持つものなので。
—結婚や出産などで住むところも暮らし方も変わることの多い女性に向けて、移住して来た時のオススメの過ごし方はありますか?
とにかくノックすることじゃないでしょうか。ノックする先は、図書館だったり、お買い物する場所だったり、あるいはスポーツジムだったり、公共の何か習い事でもいいと思う。家庭ではない外の場に勇気をもって出てみること。そうじゃないと、出会えるはずの人と出会うチャンスも逃してしまうから。
—最後に、このインタビューを読んでいるママたちにメッセージがあれば。
私が大好きな言葉が”恩送り”という意味の「Pay it forward」です。題名までは忘れてしまったんだけど、娘と本か映画を見ていて出会ったんです。誰かから受けた親切を、自分も他の人に同じような行いをすることで、親切や善意が世の中を回っていくことを示す表現です。たいていは、親切にしてくれた人も親切をした相手も、どちらも自分にとって見知らぬ人である場合によく使われる表現です。
日本の『恩返し』も素敵だと思うけど、子育てをはじめ、困った時って恩を返せるような状況じゃないと思うの。でも、いずれ自分が別の人に返せばいいと思うんです。手伝って欲しい時には手を挙げて手伝ってもらって、今度また自分ができる時に他の誰かを手伝ってあげれば良いんだから。HELPと手を挙げることを躊躇わないでほしいと思います。
NPO法人しらかわ市民活動支援会
おひさまひろば
小磯 厚子
おひさまひろば(NPO法人しらかわ市民活動支援会 内)
http://shirakawa-shienkai.or.jp/ohisama_about
住所/〒961-0905白河市本町2番地マイタウン白河2階
TEL/0248-27-2090
親子で遊べるスペースの中で親子の交流や、子育ての相談ができます。ひろばには、保育士をはじめ、子育て研修会で学んだサポーターがいます。お誕生会や季節のイベント、歯科衛生士や保健師等によるセミナー等も行っています。