長く働ける仕事を探す女性へ―転職エージェントが語る白河・県南地域の就職のリアル

久能 雄三さん、吉田 優奈さん、熊谷 遥さん
先輩移住者

移住してみたけれど、どんな仕事があるのかわからない。
子育てが落ち着いてきたけれど、製造業で働けるかな。
東京で積んできたキャリアは、ここでは活かせないのかな。

白河・県南地域に移住した女性から、こうした声が絶えません。地方移住には憧れを持って踏み切ったものの、働く段階になると「自分に合う仕事があるのか」「子どもを育てながら続けられるのか」といった不安が浮かび上がる——そんな悩みを抱える方も少なくありません。

今回は、福島県を拠点に地域企業と求職者をつなぐ転職エージェント、株式会社クノウの久能雄三代表と、スタッフの熊谷遥さん・吉田優奈さんにお話を伺いました。地域就職の実態、女性が長く活躍できる職場の条件、そして移住後に「働く」ことで広がる生活の豊かさについて、リアルな声をお届けします。

 


目次

プロフィール

転職エージェントとハローワークの違い

「製造業しかない」は思い込み?県南エリアの仕事の実態

わたしのキャリアは、地方でも再定義できる

女性が長く働ける職場の3つの共通点

就職することで、移住後の生活はどう変わる?

「つなぐ」ことが地域を変える

転職前の自分へ

地方での仕事を始める前に

最後に


久能 雄三:郡山市出身。人材業界・広告代理店での勤務を経て、株式会社クノウを設立。転職エージェントを軸に、白河・県南地方特化型転職サイトの運営、移住就労体験プログラム、農業ボランティアマッチングなど、地域と人をつなぐ多様な事業を手掛ける。

吉田 優奈:郡山市出身。福島県の地方新聞社で記者として7年弱勤務した後、結婚を機に退職。その後、株式会社クノウに入社。現在は移住促進に向けた就労体験事業や農村地域のボランティアマッチング事業等を担当している。

熊谷 遥:郡山市出身。都内で6年間勤務した後、Uターンし株式会社クノウに入社。キャリアコンサルタントの資格を持ち、現在は人材マッチング業務を担当している。

(聞き手)片野 千春


 

ー 転職エージェントとハローワークの違い

 

片野 本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、「転職エージェント」という言葉を聞く機会は増えてきていますが、実際に利用したことがない方もまだ多いかと思います。まずはハローワークと転職エージェントの違いを教えていただけますか。
久能 ハローワークは求人情報を提示してくれる場ですが、私たちエージェントは、まず「あなたが何をしたいのか」を深く聞くところからはじまります。そこを丁寧にすり合わせておかないと、最後の最後でミスマッチが起きてしまうんです。
内定が出た後に辞退、あるいは入社してすぐ退職……これは求職者にとっても企業にとっても不幸なことです。だからこそ、求人を紹介する前の段階で本質的な部分をしっかり掴むことを、何より大切にしています。
片野 “なぜ転職したいのか”という求職者の背景まで掘り下げることがポイントなんですね。
久能 もうひとつ大きな違いは「伴走してくれる存在がいるかどうか」です。転職活動は、企業を探して応募するだけではありません。面接の準備、条件の交渉、内定後の入社前フォロー。一人でやるには心細いプロセスが続きます。エージェントはそのすべての段階に寄り添います。
片野 最初の相談では具体的に何をするのですか?
久能 まずは、その方が何を大切にしているかをかけてお聞きします。安定した収入がほしいのか、キャリアアップがしたいのか、それとも家から近いところで長く働きたいのか。転職は人生の大きなイベントですから、丁寧に取り組んでいきます。
特に移住してきた方は、地域の企業情報がゼロに近い状態からのスタートです。「どんな会社があるのか」「どんな働き方ができるのか」。そういった基本的な情報収集から一緒にやっていきます。一人で抱え込まず、まずは話してみてほしいというのが、私たちの一番の思いです。
片野 その際に、気をつけていることはありますか?
久能 最初の段階で、この方が何をしたくて、企業側はどんな人材を求めているのかを、しっかりすり合わせることを大切にしています。ここが曖昧なままだと、求職者にとっても企業にとっても良くない結果につながりますから、最初の段階でのすり合わせを何より重視しています。

ー 「製造業しかない」は思い込み?県南エリアの仕事の実態

 

片野 白河・西郷エリアに移住した女性から「製造業が多くて自分に合う仕事がわからない」「事務職はあっても給与が低い」という声がよく聞かれます。実際のところ、県南地方の求人はどんな状況なのでしょうか。
久能 大きく分けると、製造・事務・サービスの3つが主な選択肢になります。サービス業は土日が休みでなかったり、休日が少なかったりするため、子育て中の方や家族との時間を大切にしたい方には選ばれにくい傾向があります。
製造業は初見では「自分には向いていない」と感じる方が多いのですが、実際には9時〜17時と勤務時間がしっかり決まっており、土日休み、手に職もつくというメリットがあります。東京でデスクワークをしていた方が製造業に転職して、「こんなに規則正しく生活できたのは初めて」と話してくれたこともありました。また、県南地方はものづくりの企業が多く集まっており、製造業の求人が比較的豊富な地域でもあります。
片野 製造業のイメージと実態にはギャップがあるかもしれませんね。
久能 そうですね。特に移住してきた女性にとっては、製造業に対するイメージが先行しがちです。でも実際に工場に入ると、整理整頓されていて清潔な職場が多いんです。工程が明確なので、仕事の全体像が見えやすいという特徴もあります。
最近は働き方改革の影響で残業が少ない企業も増えていて、「定時で上がれて、子どもを迎えに行ける」という働き方ができる製造業の求人も実際に多い。製造業に対するイメージを一度リセットしてみると、意外な選択肢が広がるかもしれません。
片野 イメージだけで判断してしまうのは、少しもったいないかもしれませんね。未経験でも大丈夫なのでしょうか?
久能 大丈夫です。異業種から製造業に転職して、今では後輩の指導を任されている方もいます。
未経験でも研修制度がしっかりしている企業が多く、入社後に戸惑うことが比較的少ないんです。ただし、私たちは良い面だけでなく、「この会社の社長はこういう人柄ですが合いそうですか」「この仕事には体力的にこういう大変さもあります」といった点も、できるだけ正直にお伝えするようにしています。ミスマッチを防ぐことが、結果的に長く働き続けるための一番の方法だと思っているからです。
求人票には書かれていない情報——社内の雰囲気や上司の人柄、子育て中の社員への配慮があるかどうか。こうした情報は、地域の企業と日頃からコミュニケーションを取っているエージェントだからこそ把握できるものです。「入社してみたら思っていたのと違った」という経験をできるだけ減らすために、事前にできる限りの情報をお伝えすることを大切にしています。
片野 求人票だけでは分からない情報まで丁寧に共有されているからこそ、ミスマッチを防ぐことができるんですね。実際に移住後に製造業へ就職した方の事例を教えていただけますか?
久能 白河の地域特化型転職サイトを通じて就職したAさん(30代・移住者)がいます。「子どもの迎えがあるので17時には必ず帰りたい」という希望を叶える形で製造系の企業に入社しました。約1年後に訪問すると、会社のムードメーカーとして活躍されていて、移住者の目線から会社の魅力を語る存在になっていました。「ここに来て本当によかった」とにこやかに話してくれたその姿が、今でも印象に残っています。

 

ー わたしのキャリアは、地方でも再定義できる

 

片野 「東京でのキャリアは、地方では活かしきれないのでは」——そんな不安を抱えて相談に来る女性が多いといいますが、実際のところはいかがですか?
久能 そうですね。一見そう思われることも多いんですが、実はこれまでの経験が思いがけない形で活かされることって、けっこうあるんです。
地域の企業さんの中には、専門知識を持った人材を求めているのに、どうやって採用したらいいのか分からなくて困っているところも少なくありません。
都市部で培ってきたスキルや視点が、そういった企業にとって「まさにこういう人が欲しかった」と思える形で、ぴったり合うこともあるんですよ。
片野 具体的な事例を教えていただくことはできますか?
久能 首都圏の企業で人事職としてキャリアを積んでいた40代の女性が、地元へ戻りたいと相談に来ました。家族の近くで暮らしたいという思いを強くお持ちでした。
話し方も佇まいも素晴らしく、東京では高い年収を得ていた方でした。でも「こっちでは自分のキャリアを活かせる仕事がない。ハローワークを見ると月給18〜20万台しかない」と、途方に暮れているように見えました。
片野 その後はどのようにご案内したのでしょうか。
久能 じっくり話を聞く中で、「定年まで長く働けること」が最優先だとわかりました。そこでご案内したのが、地域の法律系の会社です。コロナ禍を経て相談が急増し、専門知識を持つ人材を必要としていた事務所にとって、経験が豊富な彼女はまさに求めていた人物でした。
片野 条件面での工夫はありましたか?
久能 資格取得の勉強時間も勤務時間内で確保できるという条件で受け入れていただき、「こんな働き方が地方にあるとは思わなかった」と、とても喜んでいただきました。その後、プライベートも充実しているようです。移住したことで、仕事だけでなく人生そのものが変わっていった事例だと思っています。
片野 移住をきっかけに、仕事だけでなく暮らしそのものが変わっていったんですね。企業側への働きかけもされているのでしょうか?
久能 企業の社長とは日頃からしっかりコミュニケーションを取っています。「今の時代はこういう採用をしないと人が集まりませんよ」という提案も、信頼関係があってこそ聞いてもらえるものです。いきなり知らないエージェントに言われても、なかなか動いてもらえません。一緒にご飯を食べたり、イベントを手伝ったり——そうした日々の積み重ねの中で、企業の本当の課題や社長の思いが見えてきます。それを踏まえて「こういう方を採用すると、こんないいことがありますよ」と伝えると、話がぐっと動きやすくなるんです。企業側の目線を少しずつ広げていくことが、女性が活躍できる場をつくることにもつながっていると感じています。
片野 例えば女性の働きやすさがある職場について教えていただけますか。
久能 産休や育休を取得したあとも活躍している先輩がいる職場は働きやすさがあるのではないかと思います。制度があるだけではなく、周囲のメンバーが自然に支え合える環境があることが大切だと思います。周囲が戸惑ってしまうような職場では、安心して働き続けるのは難しいですよね。制度だけではなく、社員の体制が整い、支え合う文化があるからこそ、仕事を続ける人が増えていく。そんな好循環が生まれている会社こそ、本当に女性が働きやすい職場だと思います。
片野 実際に続けて働いているロールモデルがいることが大切ですよね。
久能 私たちが紹介した建設会社では、子育て中のシングルマザーの方を短時間勤務で採用してくれました。社長ご自身の子育て経験から「大変さがわかるから採用したい」と言ってくださいました。入社後は、周りのメンバーが自然にフォローし合う文化が生まれていったと聞いています。
片野 求人票だけでは分からないことや、採用担当者にはなかなか聞きにくいことも、エージェントだからこそ見えてくる部分があるんですね。

ー 女性が長く働ける職場の3つの共通点

 

片野 女性が長く働き続けられる職場には、どのような特徴があると感じますか?
久能 大きく3つの特徴があると感じています。ひとつ目が性がリーダーのポジションにいる会社、2つ目が先行事例があるかどうか、3つ目が職場の雰囲気です。
女性が社長や幹部ポジションにいる会社は、現場の声が経営に届きやすいと感じています。女性がトップや中核を担っている企業では、採用においても女性の目線で考えてくださっています。「どう思う?」と現場スタッフに意見を求める姿勢が、職場全体の雰囲気をつくっているんです。
片野 社長が男性の場合でも、女性が働きやすい企業はありますか?
久能 郡山市に、社長以外のスタッフが全員女性という会社があるんです。そこに「これから子どもを産みたい」と考えている女性を紹介したことがあるのですが、採用してくださったんですよ。
その会社には、すでに産休・育休を経験して、出産後に復帰して働いている先輩がいました。だから「うちは大丈夫ですよ」という言葉にも、ちゃんと根拠があるんです。
やっぱり、産休・育休を取得して復帰している人が実際にいる職場は、次の人にとっても安心材料になります。先行事例があることで、会社としても「こう対応すればいい」という経験が蓄積されていくんです。
片野 すでに産休・育休を経験した先輩がいることで、受け入れる側もイメージしやすいんですね。
久能 大切なのは、経営者が男性か女性かではなく、女性が働くことにどれだけ真剣に向き合っているかだと思います。制度があっても使いにくい雰囲気では意味がありません。逆に制度が十分でなくても、トップが柔軟に対応する姿勢があれば、働きやすさは生まれると思います。
片野 女性が働きやすい雰囲気というのは制度よりも重要かもしれません。
久能 そうですね。小さなことでも相談できる職場かどうかは、本当に大切です。子どもが急に熱を出した時に言い出しにくい雰囲気の職場だと、結果的に長く続けられなくなります。
求人票には書いていない部分だからこそ、私たちがしっかり確認した上でお伝えしています。 実際に職場に足を運んで雰囲気を感じたり、そこで働いている方の話を聞いたりしながら、ありのままの様子を共有するよう心がけています。

 

ー 就職することで、移住後の生活はどう変わる?

 

片野 仕事は収入を得るだけでなく、地域とのつながりをつくる入り口にもなるのではないかと思うのですが、転職や移住を経験されたお二人は、そのあたりをどのように感じているのかお聞きしていきたいと思っています。
まず吉田さん、これまでのご経歴を教えていただけますか?
吉田 郡山市出身で、大学も福島県内の大学に通っていました。大学卒業後は地元の新聞社に就職して、7年弱ほど働きました。在職中に今の夫と出会って結婚し、それを機に退職しました。その後はしばらく、働く時間をセーブしながら過ごしていました。
片野 記者のお仕事はやはりハードでしたか?
吉田 そうですね。24時間ずっと気を張っていなければいけない仕事だったので、知らず知らずのうちにストレスになっていた部分もあったと思います。結婚して一緒に暮らすようになると、ご飯を一緒に食べる時間もなかなか取れなくて、家族に申し訳ない気持ちを感じていました。そういう生活の中で、「少し働き方を変えてもいいのかな」と思うようになっていきました。
片野 退職はパートナーと相談して決めたんですか?
吉田 夫は「好きにしていいよ」という感じでした。辞めるのはやっぱり怖かったですけど、私としては仕事も家庭も中途半端になるのが嫌だったので、一旦は家庭に全振りしてみようと思って退職を決めました。
片野 そうなんですね。その後、いかがでしたか?
吉田 時間もあるし、やっぱりもう少し外に出ていきたいな、という気持ちが出てきたんです。自分で仕事をセーブしたいと思って辞めたのに、それはそれでストレスを感じてしまっていました。
片野 そこでクノウへ転職されたんですね。決めた理由は何かあったんですか。
吉田 マスコミの仕事に戻りたいという気持ちはなかったんですけど、仕事内容自体はすごく好きだったんです。久能さんと最初に面談させていただいたときに、会社の理念として「福島を元気にしたい」というお話をされていて。詳しく話を聞いてみると、地域や企業など、本当にいろいろな人との接点を大事にしている会社なんだなと感じました。自分がやりたい仕事はここにあるのかもしれないと思って、入社を決めました。
片野 記者時代と今の仕事で、一番変わったことは何ですか?
吉田 様々なものの見え方が大きく変わりました。記者時代は「この事業で何人移住につながったのか」という数字ばかりを追っていました。でも実際に事業をつくる側に立ってみると、その過程の大変さや、そこに関わる人たちの思いが見えてきたんです。
片野 立場が変わったことで、見える景色も大きく変わったんですね。
吉田 そうなんです。いまは数字だけじゃなく、その過程こそが大事だと感じています。出会う人に感謝していただけることがすごく嬉しいですね。
片野 それでは続いて、熊谷さんにもお話を伺いたいと思います。
熊谷さんはこれまでどのようなご経歴を歩まれてきたのでしょうか。”
熊谷 郡山市出身で、高校卒業後に大学進学で上京し、そのまま都内で6年ほど働いていました。当時は都内で仕事をしていたのですが、「地元に帰りたいな」と思うようになって。せっかく地元に帰るなら、地域貢献になることをしたいと思ったんです。そんなときに、知人から久能さんを紹介していただいて、入社することになりました。
片野 地元に帰ろうと思ったきっかけは何でしたか?
熊谷 漠然と「いつか地元に帰りたいな」という思いは、かなり前からありました。ただ仕事も安定していましたし、「わざわざ帰る必要はないのかな」と思っていた時期もありました。当時の部署が忙しかったこともあって、もう少しゆったり暮らせる方がいいのかな、と考えていました。
片野 クノウさんへの転職を決めた理由はなんだったんですか?
熊谷 東京で長く働くよりも、もっと地元に直接貢献できる仕事がしたいという心境の変化がありました。もともと地域貢献や地域の活性化といったキーワードは大切にしたい軸だったので、知人から久能さんを紹介していただいたときに、「福島を元気に」という会社の理念を聞いて、ここで働いていけるかもしれないと思いました。
片野 地方への転職への不安はありませんでしたか?
熊谷 ありませんでした。もしやってみて違うなと思えば、そのときにまた考えればいいかなと思っていました。地元に帰ることにも不安はありませんでしたし、仕事に対しても特に不安はなかったですね。やってみないとわからないという気持ちが大きかったと思います。逆に、よく知らなかったからこそ不安がなかったのかもしれません。
片野 現在のお仕事で嬉しかった瞬間はどんなときですか?
熊谷 やはり、求職者の方の内定が決まったときが一番うれしいですね。自分では「私は特別なことはしていないのでは」と思うこともあるのですが、「熊谷さんにいろいろアドバイスをいただいたおかげで内定をもらえました」と言っていただけると、その方が必要としていたことに少しでも関われたのかなと感じます。そう思える瞬間は、本当にうれしいですね。
片野 入社して思っていたのと違うなと感じたことはありましたか?
熊谷 想像していたより忙しかったです。悪い意味ではないんですが、東京から地元に戻ってきたので、「福島はもう少しのんびりしているのかな」と勝手に思っていた部分があったんです。実際に戻ってきてみると、地域の時間の流れはゆったりしているなと感じる場面もありました。でも会社で働いていると普通に忙しくて。正直なところ、思っていたより忙しかったですね。
片野 忙しさの中にはやりがいって見つけられたのでしょうか?
熊谷 はい。転職は大きな転換機でしたが、関わる人の幅が本当に広がったんです。求職者の方から「背中を押してもらえた」「内定が取れました」と連絡をいただく。そうした人たちのサポートができたことが、やりがいになっていて、それが今の私の原動力になっています。
片野 人とのつながりの中でやりがいを感じているんですね。
熊谷 そうなんです。キャリアコンサルタントの資格も入社後に取得させていただいて、自分自身も成長できていると感じています。

 

ー 「つなぐ」ことが地域を変える

 

片野 久能さんの会社の仕事の軸は「つなぐ」こととお伺いしました。その思いはどこから生まれたのでしょうか?
久能 私はずっと人材業界にいました。求人広告から始まって、人材紹介、人材コンサルティングと長くやってきたのですが、人材の世界だけでは会社を大きくするのに広がりに限界があると感じていました。それで地元である郡山市の広告代理店に転職して3年ほど働き、行政との仕事の進め方や企画の立て方を学んでから、会社を立ち上げました。その経験の中で特に印象に残っているのは農業PRの仕事です。小さなお子さんが畑でもいだ野菜をその場で食べて「おいしい」と言って、お母さんが「福島いいとこだね」と言う——その場面を横で見ていた時に、地域の良さを知ってもらう切り口はいろいろあるんだと気づきました。人を連れてきて、地域とつないで、その方が喜んでくれる。農家の方もたくさんの人に来てもらって野菜をおいしいと言ってもらって喜んでくれる。人材のマッチングとはまた違う「つなぎ方」でも、地域ってよくなるんだなというのがわかったんです。そこから「つなぐ」ことの大切さを強く感じるようになりました。
片野 そうした「つなぐ」仕事の中で、実際にどのような体験をされていますか?
吉田 「つなぐ」という仕事を通じて感じたのは、地域とのつながりの豊かさです。記者時代は取材という立場で人と接していたので、どうしても一方的な関係になってしまっていました。でも、今は会津地方の就労体験プログラムなど、農業体験を通して参加者や農家さんとの接点を持ちながら、一緒に体験していく中で、初めて「福島を元気にする」という実感を持つことができたんです。
片野 熊谷さんはいかがですか?
熊谷 仕事を通じて出会った方で、郡山市でUターンの方を中心にした飲み会を毎月開いている方がいるんです。毎回十数名くらい集まっていて、みんなすごく楽しそうなんですよ。私も参加することがあるのですが、Uターンだけでなく、Iターンで来た方や、ずっと地元に住んでいる方もいて、いろいろな人が自然に交わる場になっているんです。そういうつながりがあることで、地域の中に自分の居場所ができていくんだなと感じます。
片野 仕事を通じたつながりが、プライベートまで広がっていく。働くことが単なる収入を得る手段ではなく、地域とのつながりをつくる入り口になっているんですね。
久能 地方は東京ほど選択肢が多くないかもしれません。でもその分、自分の好きなものをじっくり探して深く楽しめるアフターファイブや週末は地域でゆっくり過ごせる。オンもオフも充実させたいという方にとって、とても合っている場所だと思います。

ー 転職前の自分へ

 

片野 転職前の自分へのメッセージを聞かせていただけますか?
吉田 「もうちょっと頑張ってみたら?」でしょうか。現在の仕事では多くの人と関わるため、当時は表面的な部分しか捉えられていなかったことに気づきました。記者時代は、市政、大学、警察などさまざまな分野を担当させてもらいましたが、それぞれの現場・様々なことに、もっとうまく向き合うことができたんじゃないかなと感じています。もし、もう一歩踏み込んで相手と向き合う視点を持てていれば、記事の深みも変わっていたのではないかと思います。
片野 もっと自分を高められたんじゃないかな、ということですね。
吉田 決してネガティブな後悔ではなくて、今の仕事をしているからこそ、そのことに気づけたと感じています。今に不満があるわけではないですよ(笑)。
熊谷 私は「転職してよかったね」と言ってあげたいです。公務員から民間への大きな転換でしたが、市長秘書として行政全体を見ていた経験が、今の仕事でも活きています。先ほども少しお話しましたが、関わる人の幅が本当に広がって、求職者の方から「背中を押してもらえた」と言っていただける瞬間が、何よりの喜びです。

ー 地方での仕事を始める前に

 

片野 実際に地方で働く中で、お二人はどのような変化を遂げたのでしょうか。久能さんから見て、お二人の変化について何か感じることはありますか?
久能 二人は、最初は不安を抱えていたと思うんですが、今では地域とのつながりを通じて、仕事にやりがいを感じるようになっている。その変化を見ていると、地域を良くしたいとか、関わっていけるという思いが、若い女性の方々に響いているんだなと感じています。震災の時に高校生だった世代が、地域を元気にすることへの思いを持って来てくれている。親元に近くいたいとか、地元に何か貢献したいという気持ちが、弊社のやっていることにフィットしてくれているのかなと思いますね。
片野 最後に、福島で働くことを考えている方へメッセージをお願いします。
熊谷 まずは気軽に、一歩踏み出してみることが大事なのかなと思っています。地方で働くというと、ハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。でも、いきなり大きな決断をする必要はなくて、まずは情報収集をしてみるとか、小さな一歩から始めてみるだけでもいいと思うんです。そうやって少しずつ動いていく中で、見えてくるものもあるんじゃないかなと思います。
吉田 「どこで働くか」よりも、「自分のやりたい仕事はどういうことか」という視点で探してみると、きっと新しい可能性が見えてくると思います。すでにこの地域に住んでいる方も、固定観念にとらわれず、自分がやりたい仕事を軸に考えてみることで、思いがけないキャリアの形が見つかることもあると思います。

 

ー 最後に

地方で働くとき、多くの人がまず不安に感じるのが「仕事」です。自分の経験は活かせるのか。どんな企業があるのか。地域で長く働き続けることはできるのか。

福島県郡山市にある株式会社クノウは、求職者の思いや背景を丁寧に聞き、地域企業のリアルな情報と照らし合わせながら、「その人らしい働き方」を一緒に見つけていく伴走型の支援を行っています。
地方で働くという選択には、人それぞれの形があります。すぐに答えが見つかるわけではないかもしれません。けれど、誰かに話してみることで、自分でも気づいていなかった思いが言葉になることもあります。
不安はそのままで大丈夫。
まずは小さな一歩から始めてみてください。働き方の選択肢は、思っているよりも身近なところにあるのかもしれません。

(株)クノウが受託している「しらかわ地域に特化した転職サイト」はこちら