移住は多くの人にとって大きな人生の転機となると思います。
それは地域や住居、仕事などたくさんのことを新しく選択する必要があるから。
自分の理想が移住先で叶えられるのか。
期待も不安もあると思います。
いくら調べても不安がなかなか解消されないとしたら、「これからコミュニティをいっしょに作っていきたい」と考えている地域を選択するのはどうでしょう。
そんな考えを持つフリーランスが集まるコミュニティの紹介です。
白河市は江戸時代に白河藩が置かれたことで、小峰城を中心に城下町が形成されました。
商店街には古い建物や鍵型の道路など多くの面影が残っています。
毎年2月に開催される白河市の一大行事でもある白河だるま市や、2年に1度9月に開催される提灯祭りなど、歴史や文化も根付いています。
JR東北本線白河駅から徒歩5分。商店街のちょうど真ん中に位置するのが「白河市創業者支援施設らくり」。
創業間もない起業家を支援するため設置された、白河市が運営するコワーキングスペースです。
ここで毎週木曜日のお昼に、利用者ではなくても参加できるランチ会が行われています。
「ランチ会は気軽に行っているので、週によっては人が集まったり集まらなかったり。ただ、とりあえず木曜日はわたしがいますので来てくださいって言っています」
ランチ会をはじめた星かおりさん。星さん自身も4年前にUターンし、現在はフリーのデザイナーとして活躍されています。
「これまで家で仕事をしていたんですけど、時々煮詰まってきて誰かと話したいなって。そう思ってコワーキングスペースの利用を始めました」
「らくり」は2018年に県南地方ではじめてのオープンしたコワーキングスペース。でもオープンから1年間くらいは施設をひとりで利用するという期間が続いた。
「地域にフリーランスがいるんだろうけど、どこにいるんだろうって。どうしよっかなと思って。思い付きでこのランチ会をはじめたんです。最初は友人の3人に声をかけてはじめてみました」
それから仕事でお手伝いした方や利用者の友人などが参加し、だんだんとフリーランスのつながりができた。
いまではフリーランスのSNSコミュニティができ、約30名の方がコミュニティ参加している。
取材当日はエンジニアの方やコンサルタントを仕事にされている方、カメラマンや学習塾の創業を目指す方が施設を利用していた。
「ひとと話したいって思いでゆるくランチ会をはじめてみましたが、ざっくばらんな話もあれば自分の事業につながる話など、結構有意義な時間を過ごすことができてるんですよ。例えば、婚活事業をしている方が『今度一緒にやりましょうよ』と、冗談で言ったことが形になったり、『ボランティアやろうと思っているんだよね』という話から今度手伝うよ、となったりと」
ランチ会ではそれぞれが持っているスキルをお互いに教えあったり、アドバイスをもらったりもするそうで、ちょっとしたことでも相談に乗ってくれるのはフリーランスにとってはうれしいこと。
「フリーランスってひとりで仕事することができるんですけど、わたしはひととつながって楽しく仕事をしたいと思うタイプなんです。実際にいろんな人とランチ会で出会って話してみると楽しいし、アイディア浮かぶし。仕事をお願いできて、自分の事業の幅が広がる」
「らくりに来ると、自分と同じく東京から来た方も多いので脳が刺激されますね。クリエイティブな話もできるし、対話もできるし、自分だけみたいな孤独は感じない。『同じスタンスで話せる人がいない』みたいなのから脱せるんです。多様な価値観に出会えるので、ぜひいろんなひとにランチ会に参加してほしいなって思っています」
積極的にひとがつながる場所を作っていく。その姿勢の裏には、星さん自身のこれまでの経験がある。
「わたしはこれまでデザイン事務所で働いたことがなかったので本当にフリーランスとしては右も左もわからない状況からのスタートでした。デザインに関しては独学で勉強したり、イラストレーターやフォトショップなどのオンライン講座を買って基本的な操作を学んだり、ツイッターで師匠のような方を見つけて添削とかしてもらったり。そうやって技術を学びつつ、お客さんとロゴやチラシ、ホームページのヒアリングや契約書は全然違うので、それも全部教えてもらいました。いまになって思いますがメンターみたいなひとがいないのはきつかったです。フリーランスとして売り上げが上がるのは1年半からでしたし、その間はつらかったですね」
スキルを持った方や都内との繋がりを持っている方、もともとフリーランスとしてやってきた方は地方でもフリーランスとしてやっていくことは可能だと星さんは言う。
ただ、地方だから有利ということは感じないそうだ。
「デザインの仕事は白河市だけでやっていくのはきついです。地域にも企業もありますし、選んでもらう努力は重ねなきゃいけない。そういった意味では、どこの地域でフリーランスとなっても同じなのかなって思いますね」
また、これからフリーランスになりたいと考えているひとには地域の仕事を同時に行うこともおすすめしたいという。
「わたしの場合は、もうひとつ仕事を持っています。移住者の場合、軌道に乗るまでは副業するという選択は、地域につながりができるというメリットもあると思います。そうやって少しずつ地域のニーズも集められるので」
一方でこれまでに多くのフリーランスの方との出会ってきて思うこともあった。
それは全員が全員フリーランスに向いている訳ではないということだった。
「会社という環境のほうが能力を発揮するひとがいたり、フリーランスで自走するほうが得意なひとがいたりする。基本的に自立、自走できないとフリーランスとしては難しいし、苦しいと思う。自分で問題を解決する・しようとするマインドが必要だと思います」
「集まればいろいろとできることがあると思うんですよね、チームを作ってお互いのスキルで仕事を取りに行くようなこともできる。まだ白河市ではつながり始めたタイミングなのでこれからしていきたいなっていう段階ですけど」
いま、らくりの利用者はそこまで多くはない。
でも施設利用者にも話を聞いてみると、もっと利用者を増やしてお互いに刺激を受けながらやっていきたいと同じ思いを持っているのが印象的だ。
「私は子育てのために離職した方が仕事できるようにライティング講座とかして、託児所とかあって、女性の起業家さんが増えたらいいなって。女性は横のつながりが大切なので女性が集まってここで楽しくやっていきたいと思っています」
「ランチ会は人との出会いもありますけど、同じ敷地内にたこ焼きもありますし、から揚げ屋や焼き肉屋のビビンバもテイクアウトできます。飲食店のおいしいランチを食べるという目的で参加しても大丈夫。まずはお友だちになりましょう」
県南エリアは首都圏に近く、多くのコワーキングスペースもあるため、フリーランスやテレワークをしやすい環境があります。
県南地域でフリーランスとして働く意味は何か
それはこれからフリーランスのコミュニティを育てていこうと思っているひとたちと繋がれること、その仲間といっしょに良さを作っていくことなんだと思います。
ぜひ県南地域でフリーランスを考えている方はランチ会へご参加ください。
【参加方法】
LINEオープンチャット「白河近辺起業者・クリエイターコミュニティ」に参加の上、ご連絡ください。
※取材は距離を十分に取ったうえ、撮影時のみマスクを外していただきました
○白河市創業者支援施設らくり
住所:〒961-0951 福島県白河市中町65 楽蔵2階
営業時間:9:00~18:00
電話番号:0248-29-8775
ホームページ:http://www.city.shirakawa.fukushima.jp/page/page004041.html
施設紹介動画:https://www.youtube.com/watch?v=L_FmYzmRwaY
○フリーランスコミュニティ
LINEオープンチャット「白河近辺起業者・クリエイターコミュニティ」