地域で生活をはじめるきっかけは、ひとによってさまざま。
ですが、必ずしも自分が望んだものではなくて、配偶者の転勤や親の介護などが必要に迫られて移住・転入してくる方もいらっしゃると思います。
そのような方にとって、こちらの生活は未知で不安なことも多くあるのではないでしょうか。
福島の暮らしが楽しくなってほしい
今回、そのような思いを持った3名の方に集まっていただきました。
他県から移り住んできた同世代の3人。
福島に来てから、苦労したこと、生活が楽しいと思えるようになったきっかけなど、福島で自分らしく生活するヒントをお伺いしました。
全3部の第3部です。
藤本 菜月:石川県生まれ、福島市在住。県内各地で転入女性サポートの活動や県産品のギフトショップent(福島市)を運営。
鈴木 志緒里:埼玉県生まれ、白河市在住。布小物作家。17年前に旦那さんの実家のある白河市に移住。
片倉 麻里子:東京都生まれ、白河市在住。2年前に旦那さんの実家である白河市に移住。
広がる つながり
ー 手伝いからはじまった
藤本 | 志緒里さんは、さらに白河を飛び出ていろいろ活動していますよね。 |
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鈴木 | はい。tentenさんに見つけてもらってから、移住者の方をアテンドなどで福島のいろいろな地域に行って、県内のいろいろな地域に興味が出てきました。いまでは、いろいろな地域で活動が広がりすぎていて自分でも戸惑っているくらいです。 |
藤本 | 志緒里さんには、白河のtentenのサポーターとして活動のサポートをしてもらってるんですけど、夏に志緒里さんの紹介で福島市で農業をやっているBerry’s Garden(福島市の果樹(もも)農園)さんに移住者と伺ったんですよね。Berry’s Gardenと関わるきっかけってなんだったんですか? |
鈴木 | Berry’s Gardenの代表とは、コロナとか震災よりももっと前から知り合っていました。当時、ハンドメイドイベントが各地で行われていてよく出かけていたんです。そのときに農家のお嫁さんとしてBerry’s Gardenが出店していて、りんごや野菜を売っていたんです。 |
藤本 | マルシェつながりなんですね? |
鈴木 | そうです。そのときに知り合いになっていて、それから何年か経って自分の桃畑を持つと聞きました。話を聞いて、一人でやるって言ってたので、人手も足りないだろうし、「何か手伝えることあったら行きます」って言って、手伝いに行ったのがきっかけでした。実際に、農家じゃない自分が関わることによって、Berry’s Gardenとしても可能性を見出せたのかなって私は感じています。例えば、販売の販路が広がったりとか、ロスになってしまうものを届けてくれる足になるとか、農家だけではできないところに他者が入ることで可能性が広がっていく。そういった感じで、いまは関わっています。 |
藤本 | もともとそういったことに興味はあったんですか? |
鈴木 | 畑は全然興味なかったです。 |
藤本 | 「やることあったら言ってくださいね」っていうひとはいっぱいいると思うんですけど、本当に手伝っているっていうのがすごいですね。何がきっかけだったのかと思ったんですけど。 |
鈴木 | 代表がとにかく一生懸命やってるな、というのをSNSで感じたことですね。手伝ってほしいと言われたわけでもなく、これは何か手伝えることがあれば手伝いたいって思ったんです。まずは畑を見に行きました。そしたら、草ぼうぼうで、農地も広くて、果実もいっぱい落ちていて、農家さんってやっぱり大変なんだなっていうのをはじめて知りました。応援したいという気持ちもあって、やれることがありそうだったのでボランティアで入らせてもらいました。 |
鈴木 | そうしてお手伝いしていくうちに、桃、美味しいし、楽しいかもって思ってどんどんはまっていっちゃったんです。土とか葉っぱ、木とか好きではないし、虫も嫌い、家族でキャンプにも行くんですけど、車で寝たいぐらい。でも、生きていくことと食べていくことは離せないし、恵みもらってるんだなってことを畑に行って知ったんです。「そうだよね。ここをないがしろにしちゃいけないよね」と思って。そこでBerry’s Gardenと深くなっていったんです。 |
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藤本 | それで福島市にも繋がりもでたんですね。その桃は白河市で販売しているんですか? |
鈴木 | はい。自分の実家のある埼玉でも販売しています。この美味しい桃をみんなに知ってもらうだけではなくて、ロスになっている現状や、出荷には難しい規格があることなどを商品にのせて届けていきたいと思って販売しています。農家さんは繁忙期になると収穫でめいっぱいで、畑から動けない時期があるので、その時に手伝えるひとが手伝ったらいいんじゃないのって思って。Berry’s Gardenも、快く受け入れてくださったので、販売をはじめました。 |
藤本 | なるほど。片倉さんも、志緒里さんと同じで首都圏からこちらに来たと思うんですけど、片倉さんから見て志緒里さんはどんな感じに見えますか? |
片倉 | めっちゃかっこいいです。ただ、志緒里さんは移住歴が長いので行動が軽くなるのかなって思いました。なので、私もあまり焦らないようにしようと思っています。あと、畑のこと、食べもののこと、そういう話を深くまでできるひとが近くにいるのはうらやましいです。私もいろんなことを教えてもらいたいですし、そうやってひととのつながりができていくんだなって思いました。とにかく志緒里さんの行動力はすごい。 |
辛さと寂しさと性格
ー 福島のひとたちはみんないいひとなのかなって
藤本 | その行動力って意識してやっているんですか?ハンドメイドで初めて出店するっていうのも行動ですよね。 |
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鈴木 | いえ、元々の性格があちこち行っちゃうタイプで、歯止めがきかないタイプだから興味がある所に突っ走って行きがちなんです。良い面もあれば悪い面もあるけど、とりあえずやってみようみたいな感じで。 |
藤本 | でも、その行動力によって次から次へとつながった感じですよね。ハンドメイドの作品を発信して、それを見つけてくれたひとがお店を手伝ってくれないかってなって、そしてお店を手伝って、って。それって自分が発信して動いているから周りが見つけてくれたんですよね? |
鈴木 | そうかもしれないです。周りにすごく恵まれています。いいひとに声をかけてもらっているなって思っています。でも、自分が突っ走っていっちゃうので、家族もちょっと待ってとかなっちゃう時もあるんですけど。 |
藤本 | もしかしたら、もう家族より福島の知り合いが多かったりするんじゃないですか? |
鈴木 | そうですね、多いかもしれません。旦那さんを連れて行って薪割りやらせたり、家族を巻き込んじゃっています。 |
藤本 | 行動力と範囲がすごいですね。今の暮らしは楽しいですか? |
鈴木 | 楽しいです。布小物というのも楽しいですし、あちこち行っていろんなひとに話を聞くのとかも楽しいです。もともと私がひとを好きだからなのかもしれません。いろんなひとの話を聞いて「あ、こういう考えもあるんだ」とか、「こういうひとがいるんだ」とか、すごく興味を持って、いろいろ知りたくなったり…。 |
藤本 | 昔からそうなんですか? |
鈴木 | そうです。昔から人見知りしないタイプで、すれ違ったおばあちゃんに挨拶して、親から「知ってるひと?」って聞かれたら「友だち」みたいに答えていたみたい。親もびっくりしちゃって連れてかれちゃうんじゃないかな、みたいなタイプだったみたいで。いろんなことへの興味が強いタイプなんですよね。 |
藤本 | でも、それで知り合ったひとはみんないいひとだったんですよね。 |
鈴木 | そうですね。福島のひとたちはみんないいひとなのかなって思います。 |
藤本 | 人見知りせずに自分から行動せずに話しかけていったから、向こうから答えてくれて、つながりができてきたっていう感じですか? |
鈴木 | そうかもしれないですね、ありがたいことに。 |
ー 自分から動かないと何も動かない
藤本 | 片倉さんは人見知りはしませんか? |
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片倉 | いつからかあんまり物怖じせずに誰にでも話しかけられるようになりました。でも、子どもができてしばらくしてからそういうふうになったんだと思います。自分から話しかけないと待ってても来ない、というのが感覚的にわかって。 |
藤本 | それはこっちに来てからですか? |
片倉 | いえ、東京にいるときからでした。だから公園とかに行って、友だちになりたいなって思ったら、さりげなく近づいてみたり。自分から話しかけるタイプですね。 |
藤本 | 話しかけたら反応はどんな感じですか? |
片倉 | 反応があるひとは仲良くなるし、反応がないひとはその時だけですね。 |
藤本 | 数撃ちゃ当たるみたいな感じですね。反応なくてもへこたれないという。 |
片倉 | そうですね。自分から動かないと何も動かないってことを感覚的にわかったのは、大人になってからだと思います。 |
藤本 | 確かに、もともとこっちで暮らしているひとはすでにこっちで生活が成り立ってるから、わざわざ外に広げなくてもいいんですよね。移住者や転入者はつながりを作っていかなきゃ、友だちも作れない。だから、積極的に、なるべく物怖じせずに声をかけて行動して、機会があれば話しかけてみるってことが大切なのかもしれませんね。私もそうでしたけど、移住した直後は寂しかったですもんね。 |
片倉 | そう、すごい寂しかったです。私はまだその寂しさを乗り越えないかも。 |
辛さ・寂しさを感じている方へ
藤本 | 片倉さんは、まさに乗り越えていく最中で、それを乗り越えたロールモデルが志緒里さんって感じですね。でも、志緒里さんはいろいろなひとと繋がっていて、そういったつながりを教えてくれるし、孤独を乗り越えるには、志緒里さんのようなひととつながるというのは、いい方法なのかもしれないですよね。 |
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片倉 | そうですね、そのためにも行動力はあったほうがいいと思います。人見知りしないというのも大切。 |
藤本 | もし、このタイトルにある通り、「こっちに来たときに孤独で…。」っていうひとがいたら、ひとと繋がれる場にまず行ってみてほしいですね。でも、ひとと繋がれる場がどこにあるのかを探すのは大変なんだけど…。 |
片倉 | 情報を拾うのは大変ですね。市役所とかもそういうコミュニティを紹介するのは難しいのかも。 |
鈴木 | 「どこに行ったらひとと繋がれるか」っていうことも大切だけど、そもそも自分が「誰かと繋がりたい」って思ってるという事に気づいていないこともありますよね。 |
片倉 | 移住してすぐはそうかもしれないですね。孤独だけど解消方法がわからないっていう感じかも。 |
藤本 | コミュニティの情報を入手する手段は、検討の余地があるかもしれないけど。辛さや寂しさを感じている方へのアドバイスとしては、まずは興味があるものやイベントとかがあったら、行って声かけてみてっていう感じなのかな。 |
鈴木 | あとタイミングもありますよね? |
片倉 | そうそう。とりあえずいろんな方と繋がっていて、そのときが来たら繋がれるっていうタイミングっていうのも大切なんじゃない? |
藤本 | 女性だったらまずはtenten caféにきてみたいな感じでね。 |
片倉 | tenten caféは必須ですね。 |
藤本 | 今年は2回開催しましたけど、本当はもっと頻度高くできたらいいんだけどね。他にはアドバイスありますか? |
片倉 | 友だちと会えなくても、そのひとがどんなことをやっているのかを知れるから、SNSの力は本当にすごいと思うのでやったほうがいいと思います。 |
藤本 | そうですね、SNSは積極的に活用してほしいですね。地域の課題としては、ひとと繋がれる情報や場所がわからないこと、地域と繋がりが生まれるイベントの開催の頻度にまだ改善の余地があるという感じなのかな? |
鈴木 片倉 |
そうですね。 |
藤本 | いろんなひとのつながりとか、初めて聞いた話もあって、地域のひととの出会いっていろいろあるんだなって思いました。移住者どうし繋がっていけたら、助かるひともいそうですね。それでは本日はありがとうございました。 |
【これまでの記事】
移住者に聞く、辛い移住生活や孤独をどう乗り越えたのか<パート1>
移住者に聞く、辛い移住生活や孤独をどう乗り越えたのか<パート2>
移住者に聞く、辛い移住生活や孤独をどう乗り越えたのか<パート3>(当記事はこちら)
藤本 菜月:石川県生まれ、福島市在住。県内各地で転入女性サポートの活動や県産品のギフトショップent(福島市)を運営。
◆ 一般社団法人tenten ホームページ
◆ 福島に移住・転入した女性が、福島の暮らしの情報を発信するサイト tenten fukushima
鈴木 志緒里:埼玉県生まれ、白河市在住。布小物作家。17年前に旦那さんの実家のある白河市に移住。
◆ Facebook
片倉 麻里子:東京都生まれ、白河市在住。2年前に旦那さんの実家である白河市に移住。
Blooming café住所:福島県白河市北真舟25ー2 パークシティ104ビル 1F |
県南地方振興局では、次年度以降も移住者が地域に溶け込めるような事業を予定しています。
移住者や転入者にとって、少しでもふくしまでの暮らしが楽しくなるような企画の立案や取材などにご協力いただける方を募集しています。
もし、ご興味ありましたら下記のURLからご連絡ください。
https://www.task-asp.net/cu/eg/lar070009.task?app=202400008